2019.02.06
ご高齢の交通事故被害者の方の場合や、交通事故によって脳機能に障害が生じた場合などでは、しばしば成年後見人の選任申立てが必要となる。
弁護士への委任、示談の締結などは法律行為と呼ばれ、それを有効に行うためには判断能力(意思能力)が要求される。
しかし、そうした判断能力を欠いている場合には、有効な法律行為を行えないため、それを代理する成年後見人が必要となるのである。
成年後見人を誰にするかは、最終的には裁判所が決める。希望は出せるものの、その通り選ばれるとは限らない。
私が弁護士登録をした頃は、比較的希望を聞いてもらい易かったように思う。しかし、最近は、裁判所の運用にも変化が見られ、専門家(弁護士や司法書士)が選ばれる事案も増えてきたように思われる。特に財産が多いような場合には、その傾向が強い。
もちろん、専門家が後見人となった方が、適正に財産が管理されることになるだろうから、その意味においては安心である。
その一方で、弁護士や司法書士などの専門家が後見人となった場合には、費用の支払が生じてくる。成年後見人の業務は、多くの場合、被後見人の死亡まで続くだろうから、金額は高額になる可能性がある。しかし、ご親族の希望に反して専門家が後見人に選ばれているような場合、ご親族としては無用な支出のように感じる可能性もあり、なかなか悩ましい問題である。
このように悩ましい問題もあるのだが、交通事故案件の解決に際し、被害者の方の意思能力が欠けていると思われる場合には、弁護士としては成年後見人の選任を考えざるを得ない。
ただし、交通事故との関係では、こうした後見人に支払うべき費用についても賠償に含めることも可能である。
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