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脊髄損傷

脊髄損傷

ポイントはMRI(できれば早期の)。
また正確な状況を反映させた「脊髄症状判定用」(診断書)の
作成を通じ適切な等級獲得をサポートします。

脊髄損傷とは

脊髄は、脊椎(背骨)によって囲まれた脊柱管というトンネルを通り、脳からの指令を手や足などの末梢に伝えたり、反対に末梢からの信号を脳へ伝えたりする役割を果たしています。この脊髄が損傷されると、その傷害された部位より下に脳からの指示が伝わらなくなり、また、下からの信号が脳に伝わらなくなるため、 運動麻痺、感覚障害、排尿・排便障害などの様々な障害が生じます。

脊髄損傷の後遺障害等級について

生命維持に必要な身の回り処理の動作について、
常に他人の介護を要するもの
1級
①高度の四肢麻痺が認められるもの
②高度の対麻痺が認められるもの
③中程度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの
④中程度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの
生命維持に必要な身の回り処理の動作について、
随時介護を要するもの
2級
①中程度の四肢麻痺が認められるもの
②軽度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの
③中程度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの
生命維持に必要な身の回り処理の動作は可能であるが、
脊髄症状のために労務に服することができないもの
3級
①軽度の四肢麻痺が認められるもの
②中程度の対麻痺が認められるもの
きわめて軽易な労務のほかに服することが
できないもの
5級
①軽度の対麻痺が認められるもの
②一下肢の高度の単麻痺が認められるもの
軽易な労務以外には服することができないもの 7級
一下肢の中程度の単麻痺が認められるもの
通常の労務に服することはできるが、脊髄症状のため
就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの
9級
一下肢の軽度の単麻痺が認められるもの
通常の労務に服することはできるが、脊髄症状のため
多少の障害を残すもの
12級
①運動性、支持性、巧緻性及び速度について支障がほとんど認められない程度の軽微な麻痺を残すもの
②運動障害は認められないものの、広範囲にわたる感覚障害が認められるもの

等級評価に当たり極めて重要な
「脊髄症状判定用」

脊髄損傷の後遺障害等級の基準は、上記表のとおりですが、そうはいっても、まだまだ抽象的で、あなたの症状が具体的に何等級として認定されるのか、よく分からないと思います。 そこで自賠責が用いているのが、「脊髄症状判定用」という書式です。
これは、運動機能などいくつかの機能毎にチェック項目を設け、その点数を等級決定の際の資料にしようというものです。 チェック項目は多岐に亘り、医師がそれら全ての状態を正確に把握できているとも限りません(むしろ、現実的には難しいと思います)。
そのため、この脊髄症状判定用には正確な症状(状態)を反映してもらえるよう配慮することが大切です。この「脊髄症状判定用」の書式は、こちらから事前に提出しなくても、脊髄損傷として後遺障害等級認定を行うのであれば、自賠責が病院に作成を依頼し、取付けを行います。しかし、この場合、医師が十分な記載をしてくれているのかの事前チェックができない、という問題が生じてしまいます。

脊髄損傷における等級認定プロセスと等級認定基準について

1.等級認定プロセス

脊髄症状として等級認定するか

脊髄症状として等級認定するか

等級認定基準(要件)

  • ① 脊髄損傷又は脊髄圧迫の画像所見
  • ②それと整合的な神経学的所見
  • ③ 脊髄症状(自覚症状)の存在及びその一貫性

要件① 脊髄損傷又は脊髄圧迫の画像所見の要件について

自賠責は、脊髄症状の後遺障害等級認定に関し、次のように述べています。
「身体的所見及びMRI、CT等によって裏付けることのできる麻痺の範囲と程度により障害等級を認定することとなる」
つまり、画像上の裏付けのない症状については、脊髄症状として等級認定は行わないという趣旨です(その場合は、むち打ち事案と同様に非該当や14級9号などの認定に止まるものと思われます)。

ポイント

具体的にはMRI画像が重要で、
①脊柱管狭窄等による脊髄圧迫所見
又は
②脊髄損傷所見(典型的にはT2強調MRIによる脊髄の高輝度変化等)
が認められる必要があると考えられます。

《ポイント》
T2強調MRIで高輝度変化が確認できるのは、受傷後2〜3ヶ月以内が多いようです。その後は、T1強調画像で軟化した脊髄が低輝度で描出されることがあるようですが、必ず描出されるものでもないようです。したがって、脊髄損傷の疑いがある場合は、早期のMRI撮影がポイントになる といえます。

要件② 画像と整合的な神経学的所見の要件について

脊髄損傷を窺わせる腱反射、病的反射等の神経学的所見も重要です。具体的には、画像上障害が窺われる髄節と対応する領域に神経学的異常所見が認められるということです。

具体例

たとえば、画像上、C5/6椎間で脊髄圧迫が認められる場合、それによって圧迫される脊髄は一般にC7と考えられています。そうすると、C7以下の神経が支配する領域に麻痺などの脊髄症状が生じ、神経学的異常所見も認められるはずだと考えるわけです。仮に、C5やC6神経の支配領域に麻痺等の症状が出ていたとしても、それは画像所見と一致しないと解釈されることになります。

脊椎及び脊髄

立証方法としては、「神経学的所見の推移について」という書式が存在しますので、そこに記載されている検査を実施してもらい、後遺障害診断書と共に提出すればよいと思います。どの程度の神経学的所見が必要かについては、明確な基準は不明です。ただし、これまでの後遺障害等級認定例を分析検討すると、次のようなルールが見えてきます。

画像上の脊髄圧迫の程度が軽微な場合 画像と神経学的所見との整合性を厳密に要求する
画像上明らかな脊髄損傷所見又は強い
脊髄圧迫所見が認められる場合
神経学的所見との整合性は
そこまで厳密には要求されない
脊髄症状として12級の認定に止まる場合 神経学的所見との整合性は比較的緩やか

やはり、ここでも結局のところは「総合考慮」ということだと思います。

要件③ 脊髄症状の存在及びその一貫性の要件について

麻痺などの脊髄症状が存在し、それが交通事故直後から一貫して存在することが求められます。 したがって、交通事故後しばらくしてから生じた症状については、交通事故との因果関係が否定される可能性が高まります。

例外的な事例のご紹介

私の経験した事例の中には、「遅発性頸髄損傷」と呼ばれる事例が存在します。 これは、脊椎圧迫骨折に伴う脊柱の変形が徐々に進行し、それによって脊髄損傷が引き起こされたという症例です(医学文献でも一般的に紹介されている症例です)。
脊椎圧迫骨折をした場合、しばらくすると骨癒合し、それ以降、圧潰は進行しないのですが、骨癒合するまでは圧潰が進行し易いため、それに伴って脊髄が損傷される可能性が考えられます。したがって、脊髄症状が交通事故からしばらくして発症した(又は増悪した)場合には、遅発であることの合理的根拠を示すことがポイント といえます。

交通事故のダメージを乗り越え、
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  • 学術的研究を通じ最新の議論にアンテナをはる研究活動と実務の二本立て
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弁護士 榎木貴之

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交通事故問題の将来

愛知県内の人身事故発生件数(平成27年)は4万4369件と報告されています(愛知県警察本部交通部「愛知県の交通事故発生状況」)。死者数は213件と報告されています。年別の推移をみると、交通事故発生件数は年々減少しています。しかし、都道府県別発生状況をみると、愛知県は人身事故発生件数も死者数も全国一位となっています。愛知県内の地域別発生件数をみると、人口も多いからだと思いますが、名古屋市が最も多い1万4250件と報告されています。自動制御など自動化も徐々に進み、自動車の安全性能は格段に高まっているとはいえ、やはり自動車は「凶器」に違いありません(勿論、大変便利なものですが)。
私も名古屋市に住んでおり、事務所も名古屋駅前の錦通沿いにあります。名古屋市内を走る錦通、広小路通、桜通などは車線も多く、しかも直線ですから、特に夜間などは相当な速度で走行する車も珍しくありません。車線変更の際に合図を出す、一時停止では止まって安全確認をする、そういったことを守らないドライバーを見かけることもあります。私は弁護士として数多くの交通事故案件を取り扱う中で、交通事故被害に苦しみ、人生を大きく変えられた被害者の方を沢山見てきました。現在の法制度では満足な救済が受けられず、弁護士として悔しい思いをしたこともあります。ですから、そうした無責任な運転行為をみると、心の底から腹が立ちます。 ただ、こうした交通事故問題を巡っては、近い将来、大きな変化が起こると考えられます。とても望ましい変化です。それは、2020年代には完全自動運転が実現される見通しとなっているためです。当然ながら交通事故発生件数は大きく減少するものと思われます。また、仮に交通事故が起きたとしても、自動車の位置情報が数センチ単位で把握できるようになるわけですから、事故態様の再現も容易になります。ドライブレコーダーのような画像情報も保存されるようになるはずです。これまでは、当事者の話や現場の痕跡などから事故態様を再現していたわけですが、そうした作業は非常に簡略化されていくものと思われます。加害者側と被害者側の主張する事故態様が大きく食い違う、という事態も少なくなるはずです。さらに、完全自動運転となれば、もはやドライバーの責任を観念しづらくなるため、責任の所在についても大きく変化していくはずです。当然ながら、法制度、保険制度の大幅は見直しが必要となってきます。 これからの10年間は、交通事故を巡る問題が大きく様変わりする時期だと思います。まだ議論は始まったばかりですが、弁護士として大変興味を持っており、今後研究を進めていきたいと考えている分野です。そのような変化の中で、交通事故被害者側の弁護士として思うのは、新しい制度が、被害者側に不利なものであってはならない、ということです。変化を見守りつつ、必要であれば、声を上げていくことも弁護士として必要なことだと考えています。

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