自分の判断で治療をやめず、医師と相談しながら治療を行ってください。
治療期間中の注意点とポイント
自分の判断で治療をやめず、
医師と相談しながら治療を行ってください。
治療期間中の注意点とポイント
いつまで治療費が支払われるのか
症状固定日まで治療費の支払を受けることができます。 症状固定とは、これ以上治療の改善効果が期待できない状態のことを指します。
つまり、一定期間の適切な治療を受けたにもかかわらず、症状が残存し、しかも、それ以上治療をしても改善が期待できないような状態になれば、それは症状固定の時期といえます。
ただ、症状固定の判断においては、医学的に見て改善効果が期待できるのか否かという医学的な観点のみならず、 被害者(患者)がそのダメージを受容できるかといった被害者側の観点も考慮する必要があると考えられています。
接骨院・整骨院・鍼灸院などの利用について
交通事故の治療で接骨院・整骨院・鍼灸院を利用することはできますし、実際にそうしたケースは沢山存在します。ただ、現在の裁判実務の傾向として、必ずしも接骨院等の利用を全面的に認めているわけではありません。いくつか注意すべきポイントが存在します。
接骨院等を利用する場合のポイント
- 通院中の病院(多くは整形外科)の医師に相談し、了解をもらうこと
- 病院への通院を中断せず、併用すること
- 病院と接骨院等との同日通院はできる限り避けること
- 病院での治療部位と接骨院での施術部位の食い違いが生じないようにすること
- 接骨院等の中には施術費用が非常に高いところもあり、
保険会社がその全額の支払に応じない場合があること
- 事前に保険会社と相談すること
接骨院等は営業時間も長く仕事後の通院が可能であったり、長い時間に亘ってじっくりとマッサージ等をしてもらえたり、整形外科にはない利点があるのは、間違いないと思います。ですから、それを上手く利用しながら、症状の改善を目指していくという方針は、決して間違ったものではなく、むしろ、もっと接骨院等の有用性を認めてもよいように思っています。
ただし、現在の損害保険実務・裁判実務の運用を前提とする限り、注意すべき点があるのも事実ですから、それらの点に配慮しつつ、有効に接骨院等の利用ができるよう、アドバイスいたします。
健康保険の利用について
交通事故であっても、その治療に際し、健康保険を利用することは可能ですし、通常は、それで何か損をするというような話にはならないと思います。むしろ、積極的に健康保険を利用した方がよい場合もあります。
それは、被害者にも過失が認められる場合 です。
交通事故の治療は自由診療で行われている場合が多いわけですが、それによると、治療費の総額が100万円になると仮定します。そして、被害者の過失が2割だとすると、100万の2割、つまり20万円は被害者の負担となるわけです。
治療費の総額が100万円で、被害者の過失が2割で自由診療で受診した場合
治療費用の総額が100万円で
被害者の過失が2割で
自由診療にて受診した場合
これに対し、健康保険を使用し、治療費の額が下がったとします。健康保険を使用すれば、元々自己負担は3割になりますし、点数単価も違いますので、被害者が負担する治療費の額は、大幅に減少します。それが仮に15万円になったとすると、その中の被害者の過失に相当する部分は、僅か3万円です。
健康保険を使用し受診した場合
治療費用の総額が100万円で
被害者の過失が2割で
健康保険を使用し受診した場合
このように、被害者にも過失がある場合には、健康保険を使用した方が得になる可能性が極めて高いといえます。
ただし、労災保険が適用される事案(通勤災害、業務災害)に関しては、実際に被害者が労災保険を使用するか否かに関わらず、健康保険を使用することはできませんので、注意が必要です。
別の病院への転院について
何らかの理由で別の病院への転院を検討する場合は、よくあります。その場合には、保険会社に連絡し、転院先での治療費支払の対応をお願いすればよく、大抵の場合は、応じてもらえると思います。
ただし、症状固定直前に転院を検討する場合、後遺障害診断書の作成などで問題が生じないように配慮しておくことが必要だろうと思います。
症状固定後の治療費について
原則として、症状固定以降の治療費の請求はできません。なぜなら、症状固定という概念自体が、治療効果が期待できないという意味合いを含んでいるからです。ただし、例外的に、たとえば、今直ぐに手術を行うのは難しいが、将来手術をする予定があるとか、現状を維持するためには継続的な治療が必要であるなどの事情が存在する場合には、症状固定後の治療費の請求も認められる場合があります。
私の取扱事例(将来治療費が認められた事例)
私の取り扱った裁判では、特殊な事情により今直ぐに手術はできないものの、将来手術を受ける可能性が高いとして、症状固定後の手術費用の請求を行い、それが認められた例があります。また、重度後遺障害の事例では現状維持のための定期的な通院費用は損害として認められ易く、私が取り扱った事例(示談交渉)でも、そのような費用の賠償が認められました。
将来治療費については個別具体的な判断が必要になると思われますので、ご相談ください。
今の状況に必要なポイントと注意点
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CASE | 事故直後
事故にあってしまった
直後
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CASE | 症状固定
治療に目処がつき
症状固定と言われた
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CASE | 示談案の提示 交渉・裁判
治療が終わり賠償額の提示を受けた
交通事故問題の将来
愛知県内の人身事故発生件数(平成27年)は4万4369件と報告されています(愛知県警察本部交通部「愛知県の交通事故発生状況」)。死者数は213件と報告されています。年別の推移をみると、交通事故発生件数は年々減少しています。しかし、都道府県別発生状況をみると、愛知県は人身事故発生件数も死者数も全国一位となっています。愛知県内の地域別発生件数をみると、人口も多いからだと思いますが、名古屋市が最も多い1万4250件と報告されています。自動制御など自動化も徐々に進み、自動車の安全性能は格段に高まっているとはいえ、やはり自動車は「凶器」に違いありません(勿論、大変便利なものですが)。
私も名古屋市に住んでおり、事務所も名古屋駅前の錦通沿いにあります。名古屋市内を走る錦通、広小路通、桜通などは車線も多く、しかも直線ですから、特に夜間などは相当な速度で走行する車も珍しくありません。車線変更の際に合図を出す、一時停止では止まって安全確認をする、そういったことを守らないドライバーを見かけることもあります。私は弁護士として数多くの交通事故案件を取り扱う中で、交通事故被害に苦しみ、人生を大きく変えられた被害者の方を沢山見てきました。現在の法制度では満足な救済が受けられず、弁護士として悔しい思いをしたこともあります。ですから、そうした無責任な運転行為をみると、心の底から腹が立ちます。
ただ、こうした交通事故問題を巡っては、近い将来、大きな変化が起こると考えられます。とても望ましい変化です。それは、2020年代には完全自動運転が実現される見通しとなっているためです。当然ながら交通事故発生件数は大きく減少するものと思われます。また、仮に交通事故が起きたとしても、自動車の位置情報が数センチ単位で把握できるようになるわけですから、事故態様の再現も容易になります。ドライブレコーダーのような画像情報も保存されるようになるはずです。これまでは、当事者の話や現場の痕跡などから事故態様を再現していたわけですが、そうした作業は非常に簡略化されていくものと思われます。加害者側と被害者側の主張する事故態様が大きく食い違う、という事態も少なくなるはずです。さらに、完全自動運転となれば、もはやドライバーの責任を観念しづらくなるため、責任の所在についても大きく変化していくはずです。当然ながら、法制度、保険制度の大幅は見直しが必要となってきます。
これからの10年間は、交通事故を巡る問題が大きく様変わりする時期だと思います。まだ議論は始まったばかりですが、弁護士として大変興味を持っており、今後研究を進めていきたいと考えている分野です。そのような変化の中で、交通事故被害者側の弁護士として思うのは、新しい制度が、被害者側に不利なものであってはならない、ということです。変化を見守りつつ、必要であれば、声を上げていくことも弁護士として必要なことだと考えています。