2017.03.20
過去に自動車事故でむち打ち損傷の被害に遭い、首の痛みで後遺障害等級14級の認定を受けたとします。
その後に数年が経ち、首の症状も改善し、首の痛みは消失していたとします。しかし、その後に再び自動車事故で首を受傷し、首の痛みが残ったとします(12級に認定されるレベルではないという前提です。前回の症状が14級相当で、今回の事故により12級相当の症状を残した場合は、12級の認定が受けられます。)。
その場合、再び首の痛みで14級の後遺障害等級認定が受けられるのでしょうか?
このような場合は、原則として、自賠責で14級の後遺障害等級認定を受けることはできません。
自賠責では、将来においても回復が困難と見込まれる障害を後遺障害と定義し、それに該当するものだけを後遺障害として認定しています。したがって、前述の設例のような場合には、原則として、再び14級認定を受けることはできません。
後遺障害認定される可能性があるとすると、前回の事故では首の痛みのみで14級認定を受けており、今回の事故では首の痛みに加え上肢の痺れが出現したような場合です。この場合、上肢の痺れについて14級認定を受けられる可能性があります。
また、後遺障害認定は、損害保険料率算出機構という組織が行うのですが、JA共済だけはそれとは別組織で独自に後遺障害認定を行っています。つまり、自賠責がJA共済の場合とそれ以外の場合とでは、後遺障害認定を行う機関が異なるわけです。したがって、前回の事故で使用した自賠責がJA共済以外の場合で、今回の事故で使用する自賠責がJA共済の場合には、認定する機関が異なるため、設例のような場合でも、14級の後遺障害が認定される可能性があります(実際に私もそのような経験をしたことがあります。)。ただし、このような場合でも、自賠責保険・共済紛争処理機構に対し紛争処理申請を行う場合には、そのようなわけにはいかないようです。
なお、自賠責では上記のような結論になるとしても、実際には前回の後遺障害は消失していたわけですから、裁判手続においては、そのような実態を考慮し、再び後遺障害に対する賠償が認められる可能性はあります。
交通事故のダメージを乗り越え、
前向きな再出発ができるよう
榎木法律事務所は
3つの約束をします。
交通事故問題の将来
愛知県内の人身事故発生件数(平成27年)は4万4369件と報告されています(愛知県警察本部交通部「愛知県の交通事故発生状況」)。死者数は213件と報告されています。年別の推移をみると、交通事故発生件数は年々減少しています。しかし、都道府県別発生状況をみると、愛知県は人身事故発生件数も死者数も全国一位となっています。愛知県内の地域別発生件数をみると、人口も多いからだと思いますが、名古屋市が最も多い1万4250件と報告されています。自動制御など自動化も徐々に進み、自動車の安全性能は格段に高まっているとはいえ、やはり自動車は「凶器」に違いありません(勿論、大変便利なものですが)。
私も名古屋市に住んでおり、事務所も名古屋駅前の錦通沿いにあります。名古屋市内を走る錦通、広小路通、桜通などは車線も多く、しかも直線ですから、特に夜間などは相当な速度で走行する車も珍しくありません。車線変更の際に合図を出す、一時停止では止まって安全確認をする、そういったことを守らないドライバーを見かけることもあります。私は弁護士として数多くの交通事故案件を取り扱う中で、交通事故被害に苦しみ、人生を大きく変えられた被害者の方を沢山見てきました。現在の法制度では満足な救済が受けられず、弁護士として悔しい思いをしたこともあります。ですから、そうした無責任な運転行為をみると、心の底から腹が立ちます。
ただ、こうした交通事故問題を巡っては、近い将来、大きな変化が起こると考えられます。とても望ましい変化です。それは、2020年代には完全自動運転が実現される見通しとなっているためです。当然ながら交通事故発生件数は大きく減少するものと思われます。また、仮に交通事故が起きたとしても、自動車の位置情報が数センチ単位で把握できるようになるわけですから、事故態様の再現も容易になります。ドライブレコーダーのような画像情報も保存されるようになるはずです。これまでは、当事者の話や現場の痕跡などから事故態様を再現していたわけですが、そうした作業は非常に簡略化されていくものと思われます。加害者側と被害者側の主張する事故態様が大きく食い違う、という事態も少なくなるはずです。さらに、完全自動運転となれば、もはやドライバーの責任を観念しづらくなるため、責任の所在についても大きく変化していくはずです。当然ながら、法制度、保険制度の大幅は見直しが必要となってきます。
これからの10年間は、交通事故を巡る問題が大きく様変わりする時期だと思います。まだ議論は始まったばかりですが、弁護士として大変興味を持っており、今後研究を進めていきたいと考えている分野です。そのような変化の中で、交通事故被害者側の弁護士として思うのは、新しい制度が、被害者側に不利なものであってはならない、ということです。変化を見守りつつ、必要であれば、声を上げていくことも弁護士として必要なことだと考えています。
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