2016.12.04
女性の社会進出が進み、家族のあり方が多様化したことに伴い、「主夫」の休業損害を請求する例も増えています。
女性が専業主婦又は兼業主婦として家事労働に従事する場合、比較的簡単に休業損害は認められます(通常、それほど厳密な立証は要求されません)。
これに対し、女性が外で働き、男性が「主夫」として家事に従事する場合は、それほど簡単な話ではありません。
「本当に家事に従事していたのか」を丹念に立証することが求められます。
それに加えて、家事の分担割合の立証も重要になってくると思われます。
すなわち、家事労働に伴う休業損害が認められるためには、自分のためだけではなく、「自分以外の人のために」家事をしていたといえる必要があります。
分かりやすくいうと、夫婦2人だけの家族であれば、半分ずつ家事をやっていたというだけでは、「自分以外の人のために家事をしていた」とは評価しにくく、休業損害は認められにくいのです。
これに対し、主夫である夫が80%、妻が20%程度の家事をしていたところ、交通事故によって夫が家事をすることができなくなったという場合であれば、主夫としての休業損害が認定される可能性が出てきます。
夫婦2人の家族ではなく、子供や介護を要する両親等のいる家庭であれば、夫と妻で半分ずつ家事を分担しているような場合であっても、主夫としての休業損害が認められる余地はあるだろうと思います。
家事の分担割合の話は、理論的には、女性が主婦として家事を行う場合にも問題になるはずなのですが、実務的には、その点に関して厳密な立証を要求される例は多くないと思います。これに対し、男性が主夫として休業損害を請求する場合には、そう甘くはないのです。
いずれにしても、主夫の休業損害に関する議論は、未だ十分に行われているとはいえない状態です。これから議論が深まっていくことが期待されるテーマです。
交通事故のダメージを乗り越え、
前向きな再出発ができるよう
榎木法律事務所は
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交通事故問題の将来
愛知県内の人身事故発生件数(平成27年)は4万4369件と報告されています(愛知県警察本部交通部「愛知県の交通事故発生状況」)。死者数は213件と報告されています。年別の推移をみると、交通事故発生件数は年々減少しています。しかし、都道府県別発生状況をみると、愛知県は人身事故発生件数も死者数も全国一位となっています。愛知県内の地域別発生件数をみると、人口も多いからだと思いますが、名古屋市が最も多い1万4250件と報告されています。自動制御など自動化も徐々に進み、自動車の安全性能は格段に高まっているとはいえ、やはり自動車は「凶器」に違いありません(勿論、大変便利なものですが)。
私も名古屋市に住んでおり、事務所も名古屋駅前の錦通沿いにあります。名古屋市内を走る錦通、広小路通、桜通などは車線も多く、しかも直線ですから、特に夜間などは相当な速度で走行する車も珍しくありません。車線変更の際に合図を出す、一時停止では止まって安全確認をする、そういったことを守らないドライバーを見かけることもあります。私は弁護士として数多くの交通事故案件を取り扱う中で、交通事故被害に苦しみ、人生を大きく変えられた被害者の方を沢山見てきました。現在の法制度では満足な救済が受けられず、弁護士として悔しい思いをしたこともあります。ですから、そうした無責任な運転行為をみると、心の底から腹が立ちます。
ただ、こうした交通事故問題を巡っては、近い将来、大きな変化が起こると考えられます。とても望ましい変化です。それは、2020年代には完全自動運転が実現される見通しとなっているためです。当然ながら交通事故発生件数は大きく減少するものと思われます。また、仮に交通事故が起きたとしても、自動車の位置情報が数センチ単位で把握できるようになるわけですから、事故態様の再現も容易になります。ドライブレコーダーのような画像情報も保存されるようになるはずです。これまでは、当事者の話や現場の痕跡などから事故態様を再現していたわけですが、そうした作業は非常に簡略化されていくものと思われます。加害者側と被害者側の主張する事故態様が大きく食い違う、という事態も少なくなるはずです。さらに、完全自動運転となれば、もはやドライバーの責任を観念しづらくなるため、責任の所在についても大きく変化していくはずです。当然ながら、法制度、保険制度の大幅は見直しが必要となってきます。
これからの10年間は、交通事故を巡る問題が大きく様変わりする時期だと思います。まだ議論は始まったばかりですが、弁護士として大変興味を持っており、今後研究を進めていきたいと考えている分野です。そのような変化の中で、交通事故被害者側の弁護士として思うのは、新しい制度が、被害者側に不利なものであってはならない、ということです。変化を見守りつつ、必要であれば、声を上げていくことも弁護士として必要なことだと考えています。
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