2019.05.01
2019年の日本交通法学会では、監督義務者の問題が取り上げられることになっている。この点に関しては、平成27年と28年に重要な最高裁判決が出ている。
監督義務者とは、典型的には、責任能力のない未成年者の親権者(親)である。他にも、認知症の高齢者が線路に立ち入って列車と衝突した事故において、その者と同居する配偶者が監督義務者といえるか否かが争われた判例がある。また、監督義務者に該当するとしても、どこまでの監督を行えば義務を履行したと評価できるのかも、悩ましい問題として存在する。
責任能力のない者の行為によって被害を受けた者の救済を徹底すれば、監督義務者の範囲も義務の内容も広げることが望ましい。
しかし一方で、広げ過ぎることも、現実的ではない(例えば、親としても、学校に通っている子供に常時付き添い、その行動を監視することは不可能である)。
こうした対立する利益をどのように調整するのが公平なのかという価値判断が結局は重要になってくる。
最近はこうした監督責任に対応できる保険も拡充されているようである。もちろん、保険で自衛が可能だから監督責任を広く認めてよいという理屈にはならないのだろうが、高齢化が益々進行していく中で、それぞれが保険を通じたリスク分散を強く意識していくことが重要だと思われる。
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