2016.07.25
被害者側の過失が比較的大きい交通事故の場合、被害者が加入している人身傷害保険から治療費等の支払を受けることがあります。これを「人傷一括払い」といいます。
この場合、人身傷害保険会社は、自賠責保険金に相当する部分も一括して支払い、その後、加害者が加入する自賠責保険会社に対し、その部分を求償請求していきます。
仮に被害者にも4割の過失があるとすると、被害者が加害者に対して請求できるのは、全損害の6割となります。そして、加害者に対し請求できない4割部分を補填するのが、自分で加入している人身傷害保険金です。
やや不正確な説明になりますが、分かりやすくいうと、加害者に対し6割請求し、自分で加入している人身傷害保険に残り4割を請求すれば、10割の回収ができるというわけです。
このように人身傷害保険金は、被害者自身の過失部分を補填する機能を有しています。
ここで問題になるのは、最初に紹介したように、人身傷害保険会社から自賠責保険金相当部分も含めて人身傷害保険金が支払われた場合、自賠責保険金相当部分も含めて被害者の過失部分を補填する機能を持つのか否か、という点です。
この点に関しては、東京地裁平成26年2月25日判決などが存在し、そこでは、自賠責保険金相当部分も含めて被害者過失部分を補填する機能を持つと解されています。信頼できる文献を見ても、そのような理解を前提とした記述が存在します。この点が判断されている裁判例の数は非常に少なく、また、論じている文献も少ないため、今後、裁判所がどのような判断をするか不透明な部分もありますが、通常のケースであれば、基本的にはこれまでと同じような判断が下されていく可能性が高いと私は予測しています。
いずれにしても、この問題については、今後の動向を注意深く見守る必要があると思っているところです。
© 榎木法律事務所 All Rights Reserved.
© 榎木法律事務所 All Rights Reserved.