2016.12.04
女性の社会進出が進み、家族のあり方が多様化したことに伴い、「主夫」の休業損害を請求する例も増えています。
女性が専業主婦又は兼業主婦として家事労働に従事する場合、比較的簡単に休業損害は認められます(通常、それほど厳密な立証は要求されません)。
これに対し、女性が外で働き、男性が「主夫」として家事に従事する場合は、それほど簡単な話ではありません。
「本当に家事に従事していたのか」を丹念に立証することが求められます。
それに加えて、家事の分担割合の立証も重要になってくると思われます。
すなわち、家事労働に伴う休業損害が認められるためには、自分のためだけではなく、「自分以外の人のために」家事をしていたといえる必要があります。
分かりやすくいうと、夫婦2人だけの家族であれば、半分ずつ家事をやっていたというだけでは、「自分以外の人のために家事をしていた」とは評価しにくく、休業損害は認められにくいのです。
これに対し、主夫である夫が80%、妻が20%程度の家事をしていたところ、交通事故によって夫が家事をすることができなくなったという場合であれば、主夫としての休業損害が認定される可能性が出てきます。
夫婦2人の家族ではなく、子供や介護を要する両親等のいる家庭であれば、夫と妻で半分ずつ家事を分担しているような場合であっても、主夫としての休業損害が認められる余地はあるだろうと思います。
家事の分担割合の話は、理論的には、女性が主婦として家事を行う場合にも問題になるはずなのですが、実務的には、その点に関して厳密な立証を要求される例は多くないと思います。これに対し、男性が主夫として休業損害を請求する場合には、そう甘くはないのです。
いずれにしても、主夫の休業損害に関する議論は、未だ十分に行われているとはいえない状態です。これから議論が深まっていくことが期待されるテーマです。
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