2020.04.24
目次
頸椎捻挫(むちうち)が原因で治療を受けたものの、完治せず、頚部痛・上肢しびれの神経症状を残す場合があります。
治療を受けても改善効果が得られない場合には、「症状固定」となり、残った症状は「後遺障害」として等級認定を受けることになります。
この等級認定に必要となるのが、医師の作成した「後遺障害診断書」です。
通常は、それまで継続的に通院していた整形外科で書いてもらうことになると思います。
交通事故で自賠責保険に対して提出する場合には、所定の後遺障害診断書の用紙が存在します。
症状固定日が正しく記載されているかを確認します。
よくあるのは、保険会社による治療費の支払が打ち切られた後も自費で通院を継続していた場合に、保険会社による打切り日が症状固定日として記載されてしまうケースです。
そのような問題が生じないよう、保険会社による打ち切り日以降も自費で通院を継続する場合には、将来の日を症状固定日とするのか、打ち切り日を症状固定日にするのかについて、事前に医師と相談しておくのが望ましいと思われます。
ここは症状の記入漏れがないかを確認します。
ここに記載がない症状については、等級認定審査の対象にすらならない可能性がありますので、注意が必要です。
上肢しびれがある場合には、その部位(特に左右の区別)は、きちんと書いてもらうべきです。
神経学的検査の結果、異常があれば、記載してもらうべきです。
また、画像所見(レントゲン、CT、MRI)についても、指摘できる点があれば、記載してもらうべきです。
ただ、この点をどこまで詳しく書いてもらうかは、ケースバイケースだと思われます。
この部分も、通常、可動域を測定して記載してもらいます。
ただし、むち打ち事案の場合、可動域制限で後遺障害等級が認定されることは、通常はありません。運動障害欄を記載してもらう意味としては、認定機関側に「運動障害が生じるくらいに痛みが強いんだ」という印象を持ってもらうためでしょうか。
むち打ちに付随して、眩暈・耳鳴などの症状が生じている場合には、耳鼻科への受診など別の検討が必要になる可能性があります。
また、それぞれの事案に応じ、配慮が必要になる部分も存在します(例えば、以前にもむち打ちで後遺障害認定を受けている場合等)。
頸椎捻挫(むちうち)による頚部痛や上肢しびれについては、通常、①非該当、②14級9号、③12級13号の後遺障害等級が想定されます。
簡単には認定されませんが、頚部痛だけではなく上肢しびれ感も伴い、画像上も神経への強い圧迫所見があるような場合には、12級13号(頑固な神経症状)を視野に入れた準備を行う場合があります。
その際には、他覚的所見の記載が重要になってきますので、後遺障害診断書の「他覚症状および検査結果」欄の記載を充実させたり、後遺障害診断書とは別の診断書(「症状の推移について」や「神経学的所見の推移」等)を取り付ける場合もあります。この辺りは、事案に応じた検討が必要なところです。
頸椎捻挫(むち打ち)ではなく、腰椎捻挫の場合も、基本的には似たような考え方で対応します。
腰椎捻挫の場合には、腰痛の症状に加えて下肢のしびれが生じることがあります(頸椎捻挫に付随して上肢のしびれが生じるのと似たような話です。)。
主なチェックポイントは前述のとおりですが、事案に応じた調整も必要になってきます。
当事務所では、症状固定前に介入した事案に対しては、症状等を把握した上で、後遺障害診断書作成上のアドバイスをしたり、出来上がった診断書の確認をしたりしています。
その上で、必要に応じ、医師面談等を通じて、診断書への追記や修正の相談をする場合があります。
交通事故のダメージを乗り越え、
前向きな再出発ができるよう
榎木法律事務所は
3つの約束をします。
交通事故問題の将来
愛知県内の人身事故発生件数(平成27年)は4万4369件と報告されています(愛知県警察本部交通部「愛知県の交通事故発生状況」)。死者数は213件と報告されています。年別の推移をみると、交通事故発生件数は年々減少しています。しかし、都道府県別発生状況をみると、愛知県は人身事故発生件数も死者数も全国一位となっています。愛知県内の地域別発生件数をみると、人口も多いからだと思いますが、名古屋市が最も多い1万4250件と報告されています。自動制御など自動化も徐々に進み、自動車の安全性能は格段に高まっているとはいえ、やはり自動車は「凶器」に違いありません(勿論、大変便利なものですが)。
私も名古屋市に住んでおり、事務所も名古屋駅前の錦通沿いにあります。名古屋市内を走る錦通、広小路通、桜通などは車線も多く、しかも直線ですから、特に夜間などは相当な速度で走行する車も珍しくありません。車線変更の際に合図を出す、一時停止では止まって安全確認をする、そういったことを守らないドライバーを見かけることもあります。私は弁護士として数多くの交通事故案件を取り扱う中で、交通事故被害に苦しみ、人生を大きく変えられた被害者の方を沢山見てきました。現在の法制度では満足な救済が受けられず、弁護士として悔しい思いをしたこともあります。ですから、そうした無責任な運転行為をみると、心の底から腹が立ちます。
ただ、こうした交通事故問題を巡っては、近い将来、大きな変化が起こると考えられます。とても望ましい変化です。それは、2020年代には完全自動運転が実現される見通しとなっているためです。当然ながら交通事故発生件数は大きく減少するものと思われます。また、仮に交通事故が起きたとしても、自動車の位置情報が数センチ単位で把握できるようになるわけですから、事故態様の再現も容易になります。ドライブレコーダーのような画像情報も保存されるようになるはずです。これまでは、当事者の話や現場の痕跡などから事故態様を再現していたわけですが、そうした作業は非常に簡略化されていくものと思われます。加害者側と被害者側の主張する事故態様が大きく食い違う、という事態も少なくなるはずです。さらに、完全自動運転となれば、もはやドライバーの責任を観念しづらくなるため、責任の所在についても大きく変化していくはずです。当然ながら、法制度、保険制度の大幅は見直しが必要となってきます。
これからの10年間は、交通事故を巡る問題が大きく様変わりする時期だと思います。まだ議論は始まったばかりですが、弁護士として大変興味を持っており、今後研究を進めていきたいと考えている分野です。そのような変化の中で、交通事故被害者側の弁護士として思うのは、新しい制度が、被害者側に不利なものであってはならない、ということです。変化を見守りつつ、必要であれば、声を上げていくことも弁護士として必要なことだと考えています。
© 榎木法律事務所 All Rights Reserved.
© 榎木法律事務所 All Rights Reserved.